院長コラム|大阪のがん免疫療法(免疫細胞治療)内科|吹田市 緑地公園駅近く 北大阪メディカルクリニック

院長コラム

No.156 人間は愚かな生き物

2022年05月19日

私の田舎は村です。電車は昼間は2時間に1本くらいしかなく、単線のため、電車が行き違う際には手前の駅で対向電車が通り過ぎるのを待ちます。切符は自動販売ではなく、電車に乗ってから車内で車掌さんから切符を買う。ドアは駅についたら扉横のボタンを自分で押して開ける、そんな田舎です。

さて、このような自然の中で時を過ごしていると、生き物の賢さに感心します。裏庭の木に鳥が巣を作っているのですが、外側はとてもしっかりとしているけれど、中は柔らかくふわふわ。彼らはどのようにして材料を見つけ、どのようにしてそれらをつなげていくのか。人間が自然界に放たれたならとてもあんな居心地の良い巣はつくれません。

蜂も巣を作っていますが、これがまたなんともすばらしい芸術品です。蜂は不思議なほど正確な六角形の蜂の巣・子供部屋を作るわけですが、なぜ正六角形なのか。多角形のうちで隙間なくつなげる事ができるのは正三角形と正四角形(=正方形)と正六角形しかありません。これ以外の多角形を隙間なくつなげる事はできません。例えば究極の多角形である円をつなげていこうとするとお互いの間に無駄な空間ができてしまいます。無駄な空間をなくし、かつ、周囲の長さをなるべく短くしようとしたとき、最適な形は正六角形なのです。なぜこれを蜂は知っているのか、そして、彼らはどのようにして美しい正六角形の小部屋を作れるのか。自然の生き物が持っている能力の奥深さを我々はまだほんの一部しか知らないのだろうと思います。

さて、このように鳥も昆虫も、そして草木も本当の意味で賢いと思うのですが、人間はその意味に於いては愚かだと言わざるを得ません。

ロシアが2月24日にウクライナに侵攻してからまもなく3ヶ月になりますが、この間に一体何千人、何万人の人が亡くなったのでしょうか。攻め込まれたウクライナの一般市民もそうですが、ウクライナの兵士も、そして正義のためだと戦闘にかり出され、命を落としていったロシア側の若き兵士も大勢いたでしょう。

白燐弾と思われる兵器が雨のように人々の上に降ってくる光景を見ていると、「あなたが発射した白燐弾のその下には生きた人間がいるんだぞ」と強い怒りに嘔気を催します。身の毛のよだつような冷徹さ、残忍さを人は持っています。これを「愚か」と言わずしてなんと言うのでしょうか。他の生き物はそんなことはしません。蜘蛛は昆虫を捕らえ、ライオンは肉を食らうでしょうが、それらは彼らが生きていくために行っている行為であり、悪意を持って、嘘をつき、相手を騙して、自己満足の為に行っている行為ではありません。

人類は既に何十年も前に月に行き、今や火星に目を向けることができるほどの優れた生物ですが、かたやここまで愚かなこともする生物なのです。何の為に、これだけ多くの人を殺すのか、それを正当化する心のありようをどうしても理解することができません。

侵攻当初の世界の多くの見方に反してウクライナは応戦しています。奪還した地域もあります。がしかし、そこには何千人もの「死」があります。なぜ彼らが殺されなければいけなかったのか。「(我々の死は)犬死にだが、無駄死にではない」と言ったウクライナ兵がいました。自分の国を守るという強い意志と覚悟をその言葉から受け取ったのですが、彼はどうなったのでしょうか。

この侵略を始めた人は、この行為がいかに愚かなことであるかと気づき、少しでも早く自分で幕をおろして欲しいと思います。そのことがわずかではありますが「愚か」から遠ざかる方法なのです。

コラム一覧